RISA 🍞
TSURUTA

私は少し静かにしてるね「17月3日」

WALLA

2022.1.29(st)- 2.6(sn)

17月3日

昨日までずっと雨だった。 今日は久しぶりに晴れたので、朝から何度も洗濯機を回した。でもうちのベランダは狭いので、干せなかった分はコインランドリーで回した。 乾燥を待っている間に、夢を見た。 私は森の中で誰かに追いかけられていた。夢の中ではいつも走ることができないので、私は両手を地面について、四つん這いになって逃げ回った。しかし相手はいとも簡単に、私の身体をひょいと持ち上げた。 その瞬間、目が覚めた。持ち上げられた時の縄で縛られたような胸の苦しさと、ぬちゃとした冷たい泥の感触が手のひらに残っている。 地面が濡れていたので、きっと夢の中でも昨日、雨が降ったのだろう。 洗濯機を開けると、むわっとしたあたたかい空気が顔の前に広がった。私は出来上がったほかほかの洗濯物を、泥まみれの両手いっぱいに持ち上げ、優しく抱きしめた。

dmのビジュアル。下か撮影された木の枝と空がグレースケールで撮影された写真。中央に光の輪。

どんな作品も、人の手によって作られる。作者の血肉が通っている、肉体がともなっている。作品と出会うことは、そんな作者の頭の中を覗くこと、すなわち、彼らの夢の中を覗いていることになる、と考えてみる。本展では、映像や写真など平面的な作品を主に展示するが、同時にそれらの作品を自ら解体し、展示空間に新たに構築していく。その過程で生まれた「作品」から、例えば前日に降った雨の匂いのような、冷たい泥に触れた瞬間に立つ鳥肌のような、持ち上げられて感じる浮遊感のような、作品の血肉を感じることのできる空間を創作したい。

- 「17月3日」プレスリリースより -

本展では1月29日(土)~31日(月)の3日間のみ、定員一名の予約制の回を設けています。普段、展覧会で一人きりで鑑賞することはあまりないと思いますが、どうしたら鑑賞することに集中できる空間をつくれるのか、鑑賞体験の質を上げられるのか、ということを考えて、このような回を設けました。

私はいつも美術館やギャラリーに足を運ぶたびに、鑑賞に集中することの難しさを感じていました。例えば劇場や映画館で鑑賞する場合では、座席が一人一席用意されていたり(しかも上演中は席から自由に移動できない)、客席側の照明が落とされていたり、私語は基本的に禁止されていたりなど、作品に集中できる、没頭できる工夫がなされていると感じます(それゆえの不自由さはありますが…)。展覧会は、行動の自由がある程度許されているので、自分のペースで歩みを進めて、時間を使って、そして好きなタイミング、好きな角度、好きな位置で作品を鑑賞することができます。その自由さが、作品の形式が違うので比較のできないことですが、演劇にはない良さだなあと感じます。しかしその自由さによって、展覧会ではどうしても、作品より鑑賞している他の「人」に私は意識が向いてしまうのです。ついでに監視員や在廊している作家の「視線」も。私がまだ展覧会に不慣れであることを重々認めつつ、それでも、もっと鑑賞に集中できる空間があるのではないかと考えてしまいます。

そこで、作品に意識を向ける、今過ごしているこの時間、空間そのものに意識を向ける、同時に鑑賞している時の自分の身体、思考に意識を向ける、そういう行為をもっとシンプルに行えるような空間を、展覧会という場でつくりたいと思いました。その試みの一つとして、展示空間の中で、鑑賞者が一人きりで過ごせる時間を設けることにしました。人と出会えない、触れ合えない現在のコロナ禍においても、自宅以外の場所で一人きりの空間、一人ぼっちの時間をつくることは難しいのではないかと思います(一人暮らしでなければ自宅でも難しいかもしれません)。この機会に、一人きりの展示空間で、日常とは異なる時間の流れを感じることができればと思っています。

- 「17月3日」プレスリリースより -

アーカイブ画像。丸いガラスのテーブルの上にチェキの写真が置かれている。アーカイブ画像。展示会場の部屋を撮影した写真。丸いガラステーブルと、小さな木の棚、壁に歌詞カードを模した作品がくっついている。出入り口と大きな窓もある。アーカイブ画像。木の棚の上にはノートやたくさんのペン、折り紙が並んでいる。アーカイブ画像。天井から透明なワイヤで吊るされたOHPがいくつか並んでいる。アーカイブ画像。インターホンのモニターに映像が映し出されている。アーカイブ画像。畳の部屋で丸いちゃぶ台の上にグレーの粘土が天板の形に置かれている作品。アーカイブ画像。壁にかけられたカレンダー。17月のカレンダーになっている。アーカイブ画像。OHPシートの作品。アーカイブ画像。天井から吊るされたピンポン玉。アーカイブ画像。床の角が削られて少し低くなっており、そこにモニターで作品が映されている。アーカイブ画像。会場のWALLAを外から撮影した写真。白い小さな一軒家風の建物。アーカイブ画像。会場の様子。ちゃぶ台や棚、吊るされたOHPなどがある。アーカイブ画像。レトロな椅子の上に黒い包装紙に包まれたプレゼントが置かれている。アーカイブ画像。壁にくっついた、CDの歌詞カードを模した作品。ピンクの正方形のページに、いくつか歌詞がプリントアウトされて貼り付けられている。アーカイブ画像。丸いガラステーブルの天板の中にモニターが入っておりそこに映像が映されている。アーカイブ画像。会場内の様子。白いストーブが置かれている。アーカイブ画像。会場内の様子。部屋の角に座布団が2枚壁に立てかけられている。アーカイブ画像。床に置かれた白い小さな封筒と便箋
photo by 団塚唯我

概要

タイトル
17月3日
会期
2022年1月29日(土)~ 2月6日(日)12:00~20:00
料金
1月29日(土)〜31日(月)
1000円/日時指定予約制/各回定員1名(所要時間45分)
2月1日(火)〜6日(日)
入場無料(入退場自由)
会場

WALLA 〒187-0042 東京都小平市仲町615-29

JR/新小平駅より徒歩20分、および西武多摩湖線/青海街道駅より徒歩10分

出展作家
  • 鶴田理紗
  • 杉浦修治
展示設計
  • 鶴田理紗
  • 大石一貴
音響協力
  • 柏木賢和
  • 三村一馬
テキスト
鶴田理紗
DMデザイン
香坂はるひ
アーカイブ映像撮影・編集
柏木賢和
協力
  • WALLA
  • 関結衣
主催
鶴田理紗